【イベント】氷の上に住んでいる雪氷生物

本日、8月26日(日曜日)に開催したイベント『氷の上に住んでいる雪氷生物』の様子をご紹介します。当初の予定では、中国の天山山脈(てんざんさんみゃく)からビデオ通話を行う予定でしたが、中国側の事情により、千葉大学にある竹内望(たけうちのぞむ)先生の研究室からの中継となりました。

ビデオ通話を通して、クマムシやシアノバクテリア、赤雪など様々な雪氷生物(せっぴょうせいぶつ)のお話を聞くことができました。

記念室と千葉大学の研究室でビデオ通話
雪氷生物

12年前から天山山脈を調査している竹内先生は不思議な生き物に出会いました。
「この小さい点のような生き物は何だろう?」

そこで、天山山脈で採取した試料を調査したら、それは何と新属新種のクマムシだったのです!他のクマムシは透明だったり黒だったりしていますが、このクマムシは黒っぽい色をしているのが特徴です。

しかも、新属新種のクマムシは天山山脈のいたるところで見つかりました。

どうして、天山山脈にはこんなに沢山のクマムシがいるんだろう?竹内先生は疑問に思いました。

その謎を解くカギが、シアノバクテリアと呼ばれる微生物です。シアノバクテリアは、小さな小さな黒いマリモのような「クリオコナイト粒」を作ります。このクリオコナイト粒は、太陽の日射を吸収して、どんどん氷河を溶かしていきます。

雪氷生物
探検の殿堂にも、先生が採取されたクリオコナイト粒を送っていただいたので、みなさんにご覧いただきました。

2015年当時で、クリオコナイトの影響で、1日に6センチも氷河が後退していることが分かっています。小さな砂粒が集まって、まるで砂のように見えるくらい繁殖しているようです。そして天山山脈のクマムシは、このクリオコナイト粒を餌にしているので、ここまで繁殖しているそうです。謎がつながりました。

雪氷生物
お話のあとは、みなさんにお配りした「ミニ雪氷生物研究ノート」の答え合わせをしました。

雪氷生物
雪氷生物を印刷したシールもご用意したので、ノートに貼っていってもらいます。

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みなさん、小さな雪氷生物の世界に驚かれていました。
こうした小さな生き物は、他の生き物との競争力が弱く、塩分濃度の高い海水や温泉など、過酷な環境でひっそりと生きるしか道がありません。しかし、30億年前に地球に酸素を生産したのはシアノバクテリアだったそうです。

今の生き物が溢れている地球は、シアノバクテリアが酸素を作ってくれたからなんだと思うと、感慨深いのでした…

お話しは火星にも広がりました。
火星にも氷があります。つまり、もし生物がいるとしたら、マイナス50度になるような環境でも、少ない太陽の日射を吸収して生きることができる雪氷生物ではないか?と竹内先生は考えていらっしゃるそうです。
これからの火星調査に期待です!!

竹内先生
イベント参加者のみなさま

ありがとうございましたkao01



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2018年08月26日 Posted by実はシロクマ派 at 16:41 │サイエンスカフェ